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CULTURE / MOVIE
[再配信]「台北暮色」 躍動と清楚がカジュアルな風情のまま共存

アップリンク・クラウドが展開する「Help! The 映画配給会社プロジェクト」。配給会社別に映画見放題パック配信を行っている。そこに、アジアと日本を結ぶカルチャーサイト、A PEOPLE(エーピープル)が参加。「台北暮色」、「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」、「あなたを、想う。(念念)」、「ひと夏のファンタジア」、「春の夢」(スプリングハズカム配給)の5作品を配信中。そこで、各作品のレビューを毎日、配信していく。第1回は「台北暮色」。


ホウ・シャオシェンのアシスタントを務めていたホアン・シーの初監督作品。ホウが製作総指揮・プロデュースを務め、ホウ作品やジャ・ジャンクー作品でおなじみのリン・チャンが音楽を手がけている。台北映画祭では脚本賞、助演男優賞、新人賞、撮影賞の4冠に輝き、金馬奨では新人監督賞、新人賞、オリジナル音楽賞にノミネートされた。

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「ジョニー」なる男あての間違い電話を受けたひとりの若い女性。インコの世話を続ける彼女の日常を中心に、家造りを手伝う放浪の青年、やや発達障害気味の少年、3人それぞれの人生が重なり合う様を透明感あふれる映像でスケッチしていく。

車のエンストで始まり、エンストで終わる物語。出口のない時間の中にある、束の間の清涼感が見つめられる。都市の片隅に転がる「脱臼した青春」を愛情深く綴る筆致は、確かにホウ・シャオシェンの影響下にあり、夜の情景をみずみずしく捉えた撮影も印象的。

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だが、なんと言っても終始ホットパンツ姿で動き回るヒロイン役のリマ・ジタンの颯爽とした魅力が光る。不満も、鬱屈も、彼女の肉体を通して表現されると、なぜかキラキラと輝き始める。躍動と清楚とがカジュアルな風情のまま共存しており、映画そのものをバウンスさせる原動力たりえているのだ。その意味で、これは優れたアイドル映画であり、フランソワ・トリュフォーの幾つかの映画がそうであるように「女性の脚」をめぐる映画でもある。

Written by:相田冬二


「台北暮色」
ホウ・シャオシェンは言う。「現在の台北を描いたのは、エドワード・ヤン以来だ」。女性監督、ホアン・シーのデビュー作品。惹きつけられる、目が離せないカットの数々。台北の街、路地、鉄道、道路、そこに降る雨、そこにある水たまり、その美しさ。もろくも孤独な魂たちが、美しく、強く結ばれるとき。台湾新生代の感覚が鮮烈に表象される。ホウ・シャオシェンが製作総指揮を務めた。A PEOPLE CINEMA第1回配給作品。 キネマ旬報2018年ベストテン67位/アジア映画11位(A PEOPLE調べ)。

監督・脚本:ホアン・シー
製作総指揮:ホウ・シャオシェン
出演:リマ・ジタン/クー・ユールン/ホアン・ユエン
2017年製作/107分/台湾
原題:強尼・凱克 Missing Johnny
配給:A PEOPLE CINEMA

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